2008年03月08日

聞くべき声は自分の中に:あさのあつこ

 自分に背かない。自分をごまかさない。自分を欺かない。若いうちは、ちょっと難しいかな。だけど、ぎりぎりのところで踏みとどまってほしい。

若いあなたたちの周りには、たぶんいろんな声が渦巻いている。「これが正しいのだ」「これが良い人生なんだ」「こう生きれば間違いない」等々。
だけど気をつけて。まがいものが多いから。

 聞くべき声はいつだって、自分の内にある。「わたしは、それを欲しているのか」「わたしは、何が大切なのだ」「わたしはどうして生きたいのだ」。
自分で問い続け、自分で答えを探す。見つからなくたっていい。自分と向かい合い、そこからいつだって出発した。そのことが誇らしいのだ。世間という自分でないものに振り回されるのはしかたない。弱くたってかまわない。だけど、弱いこと、振り回されていることをちゃんと自覚できている人とまるでできていない人との差は大きいと思う。

いくら金持ちでも、学歴が高くても、眉目秀麗でも、鵺のように得体のしれない世間の価値観なんかに疑うことなく振り回され、従属している人の人生は惨めだ。みすぼらしい。哀れだ。そんな人生、歩みたくないよ、わたしは、ちょっと危ないけど。

 聞くべき声はいつだって自分の内にある。モノサシは自分で作る。それで自分を計りたい。そんな自前のモノサシをちゃんと持っている人をホンマモンの大人というのだ。

若い時から耳をそばだてて、自分の声を聞いてください。モノサシをせっせと磨いてください。
後悔のない人生の定義なんて存在しない。人、それぞれが自分のモノサシを手に入れて、計り、創りあげるしかないと思う。



                 あさのあつこ(作家)











子曰わく、吾れ十有五にして学に志し、三十にして立ち、四十にして惑わず。五十にして天命を知り、六十にして耳順(したが)う。
 
論語にあるこの一節から、十五歳を「志学」、三十歳を「而立」、四十歳を「不惑」の年と言いますが、なかなかそうはいかないもの。

志学の頃から自分探しの旅は始まりますが、耳順でもその旅は終わっていないのではないだろうか?

自分をいくらしっかりさせようとしても、所詮大衆はながされるもの。バブルしかり、歴史は繰り返しています。

その時代の流れのなかで、どう自分のモノサシをしっかりと持ち、そのモノサシにしたがって納得のいく人生を送っていくのか?

難しい課題です。


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2008年03月01日

不安と安心:森毅

このごろ、「安心」と「安全」が併称されることが多いけれど、それに奇妙な感じを持っている。
危険にたいして安全であるためには、何より安心しないように心がけること。危険はたいてい、安心している時にやってくる。

野生の動物を見ていると、彼らはいつも危険を警戒している。
だから不安は安全の対価のようなものである。

しかし文明化した人間は、いつも不安だと疲れるから、何かに頼って安心したがる。長期的には無理だとしても、さしあたりは安心して暮らしたい。
それが幻想であったとしても。

これからの時代は流動性や多様化に向かいそうだから、それだけにかえって安心したい。
がんばろうとして、がんばれない自分を責めるのは鬱病の徴候だが、それに似て、安心しようとして安心できない時代を責める。
「安心不安症」とでもいったものが、時代の病。

不安を除くのではなくて、不安を飼いならすことが時代の処方のはず。
本当に不安を排除してしまっては、危険にたいして安全でないから。

今さら野生に戻れない身としては、安心できる場を選びたいが、それも完全には無理なのだから、さしあたりの気休めと思ってほどほどに。


            PHP3月号より『不安のしずめかた』









情報がないと人間は不安になります。情報がありすぎても人間は不安になるものです。自分が納得できる情報を理解すると人間は安心します。安心すると人間は落ち着きます。不安なままでは落ち着きません。
どこまで情報を得て、どこで納得して落ち着くか。不要な情報はどこから排除してリスク許容範囲をどこに設定して安心するか。

不安なままでは人間は精神的に持ちこたえられません。人間が孤独では生きていけないのと同じです。

不安を解消するには情報を収集して、対応を考え、考えたとうりに行動して、不安なことを少しづつ対処できていくと不安は消えていきます。

眼をつぶって想像した象は案外小さかったりするものです。
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2008年02月23日

ああ、阪神タイガース:野村克也

地域密着という点では、阪神は理想的な球団だと言っていい。

阪神が本当の意味での手本となり、伝統を感じさせるようなチームに変貌すれば、さらにファンは増えるだろうし、それを見たほかの地方のファンも負けられないと考え、プロ野球全体の発展につながるであろう。

そのためには、球団自体が生まれ変わらなければならないのはもちろんだが、メディアやファンも意識を変える必要がある。

メディアの役割とは、選手にすりよって得た情報によって提灯記事を提供することではないだろう。ましてや推測や憶測で記事を捏造することでは絶対ない。
経験に基づいた客観的な視点で物事を的確に判断し、事実を報道するとともに、「よいものはよい、悪いものは悪い」と指摘することが指名であるはずだ。たとえ特定の人物に張り付く番記者であっても、いや番記者だからこそ、選手やチームがダメなときは叱咤し、正しい方向に向かわせるくらいの気概がなくてはいけないと私は思う。

ファンも同様だ。阪神のファンは選手とチームに注ぐ愛情という点では日本一だといっていい。しかし選手を甘やかしたり、かわいさあまって罵倒したりするだけが愛情ではない。ましてや自分の虚栄心のために選手を引きまわすことなどあってはならない。もちろん、そんなファンは一部だということは承知しているが、ほんとうに愛情があるならば、自分がどういう行動をとることが選手とチームのためになるのか、いま一度考えてみても損はないだろう。

そして、選手と球団。選手はもちろんだが、球団の職員も、自分たちはこうしたファンに支えられているからこそ仕事ができるのだと感謝すると同時に、ファンとプロ野球のために全力を尽くしているか真剣に考えなければならない。

メディア、ファン、選手、球団。それぞれが阪神タイガースというチームに誇りをもてるようになってほしい。

阪神のOBのひとりでもある私は、そんな願いもこめて本書を記していった。


        野村克也『あぁ、阪神タイガース』より















野村監督の指導法は、可能性のある2流の人に対してはまずほめまくるようです。その次、1流レベルになってきたら例の愚痴を連呼する野村節がでてくるようです。3流以下は無視するようです。
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2008年02月16日

ブログから:中川翔子

ミスコン出身のルックスで、オタク趣味をさらけ出す。相反するようなキャラクターが、老若男女に一般人マニアに、わけ隔てなく受けている。

ブレークのきっかけとなったブログは、「ギザカワユス」(とてもかわいい)のような「しょこたん語」を操る。食べ物、ゲーム、アニメ、漫画、化粧品と、最新のお気に入りを思いのまま紹介していく。

陽気に振る舞う「ブログの女王」の土台には、マイナス思考に悩んだ過去がある。

父は9歳のときに亡くなった歌手の中川勝彦。デビューしたら2世タレントの恩恵どころか、父への陰口を聞かされた。高校には話の合う友達がいない。人間不信に陥り、「タレントはやめよう」と思いつめた。

だから、「せめてブログは好きなことを」と遠のいていた趣味の話を書き続けた。すると気分も楽しく、前向きになっていく。やがて、タレント業もプライベートも、すべてがうまく回り始めた。

仕事を終えた深夜から、家で飼い猫と戯れ、テレビやDVDを見て、画集を眺め、コスプレにふける。ブログは1日に80回以上更新したことも。趣味に「貪欲タイム」が元気のもとだ。「忙しいからこそ、自分の時間を大切にしたい」

何かに追われるかのように意欲的に行動するのは「人生たった3万日」という友人の言葉が忘れられないから。
「そんなに短いのに、くよくよして生きていたのか」。漫画を描き、CDを出すのは、生きた証を形に残すためでもある。

本当は歌手になる気はなかった。嫌いになった父の職業に、興味は薄かった。その一方で、アニメソングを歌いたいという夢があった。

昨年10月、東京のCCレモンホールで開いた初コンサートで、「雨の動物園」を歌った。唯一好きだった父の曲。旧名の渋谷公会堂時代、同じステージに父も立ったことを思い出し、自ら志願した。歌い終え、父へのわだかまりがとけた胸の内を、こう言い表した。

「反抗期が終わった」

コンサート、NHK紅白歌合戦出場に続き、今年は5月に全国ツアーがある。「気持ちに欲が出てきた。まだまだ夢ができ続けています」

自分の心は着飾らない。


            朝日新聞より













しょこたんブログはexciteが提供しています。アメーバやシーサーではありませんでした。
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2008年02月09日

イージーライダー:奥田民生

Jポップの大立者だが、偉ぶらない。気取らない作風ともあいまって、「脱力系」と評されることも。
何を聞かれても、まずは「そうっスね」。
少々ぶっきらぼうな感じを漂わせつつも、続ける答えは、総じて素朴で謙虚な内容。実際以上に自分を大きく見せようとしない。

例えば。07年は業界生活20周年記念ベスト盤「記念ライダー1号」「記念ライダー2号」に加え、「井上陽水奥田民生」でも新譜を発表。他の人気アーティストによるカバーアルバム「ユニコーン・トリビュート」「奥田民生・カバーズ」も発表され、大いに脚光を浴びたが、「僕の仕事は例年どおり。周りに助けてもらって、派手に見せている」。
ひょうひょうと話した。

野球日本代表公式応援ソングを頼まれ、「無限の風」を作詞作曲し、自ら歌っているが、「『張り切っていきましょう』的なものが自分の内には、あまりない。応援歌ぽくなくても、いいかな、と」

しばしばてれくさそうな感じになる。

史上初の広島市民球場コンサートを実現したほど、故郷・広島と広島カープを愛しているはずなのに、「生まれた所は選べないですからね。選んで広島を好きになったわけではない、とも言えるわけで」などと言う。

唯一自信たっぷりに話したのが、先月に発表した新譜「Fantastic OT9」の出来栄えについて。
日ごろから、自ら音楽を楽しむことと他者に聴いてもらうことのバランスを重視しているというが、「今回はいい感じ」。「今までの自分の作品の中ではダントツにレベルが高いですね」と言い切った。

ユーモアも重視。「まじめなことばかり詰め込む音楽を、僕はあまり楽しめない。やっぱり力が抜け切るようなところが好き」。
歌詞で韻を踏み、メロディーの随所に遊び心をしのばせる。曲名もユニーク。30歳ごろの大ヒット「イージュー☆ライダー」は30を意味する業界用語「イージュー」と洋画の名作「イージー・ライダー」をひっかけている。

今年の目標は「特にない」がライブの割合を増やすこと、プライベートでは、新球場建設で今年が最後となる広島市民球場での野球観戦(ビールたっぷりつき)を希望している。


            朝日新聞より











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2008年02月02日

元気の出る話:エルトゥール号

明治時代に公務を終えたトルコの軍船が、帰国するときに嵐に遭って小さな村で座礁してしまいました。
多くのトルコ人が血だらけで海岸に倒れているのに気づいた村の人たちは、嵐の中、必死に救助しました。

その後も助けた人の介護を続けましたが、貧しい村だったので十分な食料もありません。最後は非常食の鶏までも与えて介護を続けました。
しばらくして、事故に気づいた明治政府が、援助の手を差しのべたので、助かった人達を無事にトルコに送ることができました。

1985年のイラン・イラク戦争のとき、当時のイラクのフセイン大統領が、「今から48時間後にイラクの上空を飛ぶ飛行機は民間機でも撃墜する」
という無茶な声明を発表しました。

当時の日本政府は急な事態に対応が遅れて、残された日本人を救援する飛行機を飛ばすことができませんでした。

現地の日本人は空港に集まりましたが、どこの航空会社も自分の国民を乗せるだけで精一杯で、日本人が乗れる飛行機はありませんでした。

その時、時間ぎりぎりにトルコの民間機が到着して、日本人を救出してくれました。外務省が問い合わせるとトルコ政府は、

「私たちはエルトゥール号のことを忘れてはいない。だから日本人が困っているのを知って助けにきた」

と話してくれました。トルコでは教科書にもエルトゥール号の話が載っているそうです。


           『大切なことに気づく24の物語』より

















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2008年01月26日

「母べえ」:吉永小百合

銀幕に登場して約半世紀、積み重ねた作品は112本。「母べえ」(山田洋次監督)は、演じ続けてきた「清楚で優しく強い女性」の集大成といえる。

戦争の時代を生きた母親の役だ。夫が思想犯として投獄された中、9歳と12歳の娘を守り、育てるために奔走する。

今年で63歳になる。「私が演じるにはちょっと若すぎると思ったので、率直に申し上げたら山田監督は『当時のお母さんは大変で、みんな、くたびれていたんですよ』。そうだ、疲れたお母さんなら私も演じられるととても気が楽になりました」

山田作品は、過去、男はつらいよシリーズの「柴又慕情」(72年)と「寅次郎恋やつれ」(74年)に出演。結婚・休業という人生の転機をはさんだ時期だった。
「人間として生きることをもっと大事にしなきゃいけないととても感じた作品です」

それから34年、今回も特別な作品になった。俳優としてのこれまでのあかを落としてもらった感覚になったというのだ。

「長く仕事をしてくると自由にはやらせてもらえるが、自分の中の引き出しからあるものを出すしかない。山田監督の現場はその場でつくっていく。監督がいろいろな提案をして、俳優がそれに応えていく。ワークショップのような現場の中で、古いもの、手軽なノウハウみたいなものを捨てられた感じです」

原爆詩の朗読なと平和を訴え続けてきた。「母べえ」でも普通の人々が懸命に生きる姿を通じて命の大切さをうたいあげる。そして母への思い。母べえは何度も子供抱きしめる

「今のお母さんたちは子供を抱きしめることが少なくなっているのでは。母と子が体を触れあってコミュニケーションをとるという原点が表現できたら。私も小さいころはこうやって抱きしめてもらっていたのです」

113本目を撮影中。今秋公開の主演作「まぼろしの邪馬台国」では、盲目の文学者を支える妻の役だ。「いろいろなテクニックで演じるほうではないので、『とにかく心をこめて』が私のモットー」

原節子のように若いうちに引退する道を選ぶか悩んだ時期もあったというが、今は「できれば120本はやりたい」


             朝日新聞より














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2008年01月19日

次の時代に:早乙女太一

子どもだから”の甘えも失敗も許されない旅の一座で、ものごころつくかつかぬかで舞台に立ち、一足飛びに”大人”になった。

「損とは思わない、人生に絶対マイナスじゃない。責任を持たされるとは、きちんと評価もされることだから」。
大衆演劇の枠を超え、映画ドラマに艶やかな花を咲かせる早乙女太一は16歳。

大阪・新歌舞伎座で2月、同劇場最年少の座長公演「千年の祈り」に挑む。

初舞台は4歳4ヶ月。踊りが得意な「お祭り太一」は6年余の後、妖艶な女形に成長し、透明感ある美貌と舞で、たちまち観客を魅了した。

北野武監督の抜擢で「座頭市」に出演、注目を集めたのが03年。だが同じ頃、大きな壁も見えてきた。「旅も稽古も普通の生活と思っていたし、踊るのは大好き。でも成長につれ、振り付けが固められてきて。幼い頃のように自由な表現が許されなくなってきた」

やりたいようにやれないなら、有名なんかなれなくていい。生まれて初めて舞台に立つのが嫌だと感じた。
でも周囲は許さない。旅は続き、05年1月には父が座長の「劇団朱雀」2代目に。外部出演もした。
やがて、すとん、と整理がついた。

「舞台でもらえる拍手に自己満足していたレベルの低さに気付いた。僕だけの表現じゃだめ。多くの人に思いを伝えるにはどうするか。まず考えるべきだ」。

壁は一層、高くなった。
「今は挑戦するしかない。舞台でも映像でも、合うものを探して生かして磨き上げ、自分の武器を増やしたい。目標はそれから定めればいい」

活躍はますますめざましい。
昨年末の紅白歌合戦では「夜桜お七」であでやかに舞い、新春ドラマ「あんみつ姫」にも登場。3月からは宮本亜門演出の祝祭音楽劇「トウーランドット」に宦官役で出演する。

人気の実感はあまりない、という。「周囲に恵まれ、気がつけば世界がどんどん広がっていった。自分の力だけでは、ここまで来られなかったから」。

涼しい目元をふっと伏せ、「運が良かったんですよ」とつぶやく。

でも、もちろん彼は知っている。幸運の花は、努力という根を人知れず地中深く広く張ってこそ、初めて咲かせられるのだと。
糧を吸い上げ蓄えて、花は色香を増していく。

人生の結実は、はるかその先に待っている。


            
                 朝日新聞より








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2008年01月12日

舞台の中心で:大沢たかお

ミュジカルの舞台に初めて立つ。
「歌は苦手なんですけど」と苦笑いするが、その表情からは芸歴20年、40歳を目前にしての新たな”ステージ”に賭ける覚悟が読み取れる

「ファントム」の原作はガストン・ルールの小説「オペラ座の怪人」。顔に傷を持つために仮面をかぶり、心を閉ざしてオペラ座の地下でひっそり生きる男が、愛に触れて人間らしさをつかむ様を描く。

アンドリュー・ウェバー版がよく知られているが、ファントムの人間性を強調する今回のアーサー・コピットの脚本も高く評価されている。

「ただの怪人ではなく、より純粋でより人間くさく、内面に渦巻く感情を表現したい」。ファントムの苦悩に寄り添う言葉に、実直な人柄がにじみ出る。

ニューヨークでミュジカルを見て歩くのが好きだった。映画テレビとは違った撮り直しのきかない緊張感に包まれ、舞台と客席が一体化する感覚。見事に溶け合う歌と芝居。終演後は酒を飲んで余韻に浸りながらも、どこか遠い世界に思えてならなかった。
「自分には難しいかなと思っていたし、人前で歌う自分は想像できなかった」。

数年前、そのニューヨークで変化が起きた。音楽と人間ドラマが生み出す迫力に心揺さぶられ、「素人なりに、これなら命がけで挑戦してみたい」とわき上がる思いがあった。

04年に出た舞台「ディファイド」の演出をし今回の演出も担当する鈴木勝秀に話を持ちかけ、その思いは花開いた。

振り返ればいつも新しいことに挑戦していた。モデル時代は毎月のように海外へ撮影に行き、ファッション誌を飾った。時はちょうどバブル経済のころ。

「今では考えられない華やかさだったけど、服を着て表現することがなんだかもの寂しくなってしまって」。

モデルをやめてテレビで俳優デビューをした。すぐ演じる楽しさと自由さにとりつかれ、ここ10年ほどは活動の軸を映画に置く。

そして13日、スクリーンから2000席の劇場へ、自分を魅せる空間をまた1つ広げる。

ボイストレーニングを重ねてきたが、不安はある。
「客席が母と姪っ子、事務所のスタッフだけだったらいいのに」。

悩めるファントムの仮面の下には、人間味あふれる笑顔が隠れていた。


               朝日新聞より





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2008年01月05日

思い込みの罠

新幹線に乗るとき、改札機に乗車券と特急券の2枚をいれますね。そのとき、どちらの切符が上になって出てくるか、ご存じですか?

そんなこと考えたこともない?

たぶん、たいていの方がそうだと思います。
実は、JR東海とJR東日本では出てきかたが違います。JR東日本では、入れた通りにでてきます。つまり特急券を上に乗車券を下にして重ねて入れると、同じように、特急券が上になって出てきます。

ところがJR東海では、どんな入れ方をしても、必ず乗車券が上になって出てきました。

なぜ、そんなことに気づいたかというと、わたしは、ある「判断基準」を持っているからです。この基準というのは、「お客様本位か?」ということです。

仕事柄、年に百回ほど新幹線に乗ります。たいてい急いでいます。その時、改札を通ってから最初に知りたい情報は、行き先でもなければ、料金でもない。そんなことは乗る前に知っているわけですから。

知りたいのは、乗る電車が何で何番線から出るのかということです。
そしてそれは特急券に書いてあります。
だから特急券が上になって出てきてほしい。でも出てこない。

ましてや、新幹線に乗るときというのは出張ですので、大きな荷物を抱えているときも多く、乗車券が上に出てくると、上下を入れ替えなければならず、一動作増えることになります。

不親切だなと思います。というか、乗車券+特急券という常識的な順序にこだわっているんでしょうね。いずれにしろ、それは「お客様本位」ではありません。

つまり、「お客様本位」という「判断基準」で見ていたら、切符が自動改札機からどういう順序で出てくるのかに気がついた。その結果、JR東海とJR東日本のサービスに対する考えの一端も見えてきた、というわけです。


             小宮一慶『発見力養成講座』より

顧客本位で対応できているか?これは商売においては大切な要因です。一方で、信念に基づいて妥協しないで物・サービスを追求する。これは顧客本位でないこともありますが、顧客は納得して我慢して?賞賛します。この二つは相容れないものかもしれませんが、バランス感覚で調整するのも一つでしょうし、顧客本位に徹底するのも一つでしょうし、信念を貫き通すのも一つかと思われます。要は、その商売・物・サービスがその環境にマッチしているか?ここが肝腎です。
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